人生の中でも最良の日となるはずだった結婚式当日、花嫁にとってトラウマ確実の悪夢のような事件が起こった。
この結婚式は何かがおかしい…
その日、中国陝西省(せんせいしょう)の豪華なホテルで、新郎ワン、新婦シャオリーの結婚式が予定されていた。
新郎、新婦、それぞれ200人ずつ家族や知人を招いた大掛かりな結婚式で、会場には若いカップルの門出を祝う人たちが集まりだしていた。
しかし、式の開始時刻が近づくにつれ、花嫁と両親は異変を感じ始めた。
新郎側の招待客のテーブルが一向に埋まらず、スッカスカだったからだ。
確かに、新郎も200人の参列者を招いたはずだったが、その人数は半分にも満たない。
「みんな会場に向かってる途中なんだ」
新郎のワンは、理由あって参加者たちが遅れている言うが、どうも怪しい…
そこで、花嫁と親族がワンの招待客数人に話を聞くと、疑惑は、さらに色濃くなっていった。
招待客は「私は新郎の友達だ」とは答えるものの、「どのような関係なのか」は、誰も答えない。
さらに、新郎ワンの両親すらも式に現れない。
そこで、ついに花嫁シャオリーは確信した。
「こいつ…結婚詐欺師だ…」
新婦が自ら警察に通報し、現場に現れた警官によって事情聴取が行われた。
すると、疑惑の新郎ワンのついていた嘘が次々と明らかになっていった。
招待客は全員バイト
まず、警察は会場にいた新郎の招待客に話を聞いた。
さすがに、警察へ下手な嘘はつけないと観念し、どの招待客も、「これまで新郎に会ったことはない」と認めた。
全く面識のない招待客は、学生やタクシーの運転手など職業バラバラ。
実は、彼らは新郎がネット上で「結婚式に参加してくれたら、お礼に80元(約1300円)払うよ」と募集して集めた、いわゆるサクラだった。
中国では、結婚式で見栄を張るためにサクラの出席者を雇うケースも少なくないそうだが、このワンと言う男は、オールサクラで式を乗り切ろうとしていた。
サクラの出席者が新郎ワンとやりとりしたスマホのテキストメッセージも証拠として警察が押収。
大金を借りまくってた男
結婚式の参列者にサクラを雇う事自体は、罪ではない。
しかし、新郎ワンは、自分の素性や経歴の全てを嘘で塗り固めていたから質が悪い。
「彼は私にとても優しく、会計はいつも払ってくれたし、私の要望にも答えてくれてました。
しかし今になって考えると、私達には共通の友達が一人もいないし、彼の両親を紹介されたのですが、たぶんお金で雇われた人だったのでしょう」
花嫁はワンと3年間交際して結婚することになったが、実は、本当の彼のことは何一つ知らなかったのだと、騙されて初めて気がついたそうだ。
さらに、警察の捜査でワンが花嫁家族に多額の金を借りていたことも明らかになった。
ワンは、3年の交際期間中に花嫁の家族から110万元(約1800万円)以上の金を借りていた他、「結婚後に二人で乗る車を買おう」と、70万元(約1100万円)もせびった。
そして、もう一つ衝撃の事実が発覚した。
なんと、これだけの結婚詐欺を仕掛けたワンは、若干20歳だったのだ。
しかも、中国では、法的に結婚が認められるのは男性が22歳からなので、自分の年令まで偽っていたワンは、当然のことながら逮捕され、これから裁判で裁きを受けることになる。
この結婚詐欺事件は地元のニュース番組でも放送された。
すると、ワンの本当の両親が名乗り出てきて、騙された花嫁と家族には息子が騙し取ったお金を返済すると約束したのだとか。
中国のニセ人材派遣市場
中国では、料金で雇うことが出来る「ニセ彼女」「ニセ従業員」「ニセ友達」などのサービスを提供する会社も多く、実際にニーズは大きいんだとか。
結婚詐欺師ワンも、会社を通して参列者を集めていれば、結婚式を乗り切れたかもしれないが…