ビートルズ、ローリング・ストーンズ、オアシス、ブラー、ケミカルブラザーズ、ファットボーイ・スリム数え切れないほど世界の音楽シーンに影響を与えるミュージシャンたちを輩出してきたイギリス。
そんなUK音楽シーンに、全く新しい斬新な手法でダンスミュージックを作るアーティストが登場した。
養蜂家のミツバチテクノ
this sunday showing at @sheffdocfest a 360 video about Bioni Samp art, music & sound design #savethebees @beespace pic.twitter.com/ahMcMqpV75
— bioni samp (@beespace) 2016年6月9日
こちらが素顔を隠した覆面アーティストBioni samp。
本名などはを公表していないBioni sampは、実は本業が「養蜂家」と言う異色の経歴を持つ。
ミツバチを飼育してハチミツを採取する養蜂家のBioni sampは、常にハチ対策用の防護服姿でメディアやライブステージに登場。
さらに、楽曲制作には「ミツバチが出す音や周波数」を使い、何とも不思議なテクノ、EDMを発表している。
そんなBioni sampがミツバチミュージシャンとして活動を始めたのには、意外な理由があった…
始まりは蜂群崩壊症候群
Bioni sampは、イングランドのウェスト・ヨークシャー出身で、幼い頃からミツバチに興味を抱き、職業として養蜂家の道を選んだ。
そんな彼が音楽を作り始める、きっかけとなったのは2006年頃から世界中で大きな問題となった「蜂群崩壊症候群(ほうぐんほうかいしょうこうぐん)」だった。
「ある日突然、大量のミツバチが姿を消してしまう…」
そんなニュースを聞いたことのある人も多いはず。
これこそが蜂群崩壊症候群と呼ばれる現象で、アメリカ、ヨーロッパ、インド、ブラジル、そして日本でも発生したことがを確認されているが、その原因は今でも明らかになっていない。
現在でも毎年、何十億匹ものミツバチが消失しているため、生態系にも悪影響が出ているとか。
養蜂家のBioni sampは、世間に蜂群崩壊症候群へ興味を持ってもらうため、ミツバチを利用した音楽の制作を始めた。
「もし私が環境保護団体のバッジを付けて森林破壊について叫び始めたら、周りの人はウンザリして話を聞いてはくれないでしょう。
だから私は、テクノ音楽やコンピュターに関心を持つ人達へ向けて、音楽で生物学的メッセージを伝えるアイデアを思いついたんです」
ミツバチを使った楽曲制作を思いついたBioni sampは、ミツバチの出す音や周波数を分析し、レコーディングを開始。
ミツバチの出す周波数によって音の変わる特殊なシンセサイザーなども自作し、一風変わったダンスミュージックをネット上で発表するようになった。
ミツバチ音楽と環境問題
Bioni sampの存在はヨーロッパ各国にも広まり、環境系のイベントやアートギャラリーなどに招かれライブパフォーマンスを行うようになった。
ミツバチと音楽で、蜂群崩壊症候群や環境問題に人々の関心を向ける彼の目論見は見事に当たったのだ。
ただ、その活動を快く思わない人達もいる。
Bioni sampの活動を取材したドキュメンタリー作品が製作されたが、ある映画祭では作品の出品が拒否されてしまった。
「映画祭の後援には農薬会社がいたんです。農薬否定派の私の考えが世間に広がることを望まないのでしょう。これは検閲みたいなものです。何年も前に養蜂を始めた時は、これが政治や社会問題と結びつくとは思いもよりませんでした」
Bioni sampは今後も新曲のリリースやライブ活動を行っていくそうなので、誰か日本にも呼んでくれないかしら?