スペインに暮らす、72歳のマルコス・ロドリゲス・パントージャさんほど数奇な少年時代を過ごした人も珍しい。
なんとマルコスさんは、かつて12年もの長きに渡って、オオカミの群れと一緒に集団生活をしていた、正真正銘のオオカミ少年だったのだ…
オオカミと暮らす少年
1946年にスペインのアンダルシア州コルドバで生まれたマルコスさんは、3歳の時に母親と死別。
その後、父親は別の女性と親しくなりマルコスさんの育児を放棄。
マルコスさんは山岳地帯で羊飼いをする老人に預けらた。
しかし、マルコスさんが7歳の時に年老いた羊飼いとも死別。
幼い少年は、山の中で、たった一人になってしまった。
それから12年後…
民間の山岳警備隊が、野生のオオカミの群れの中に一人の青年を発見した。
それは、19歳に成長したマルコスさんだった。
なぜ、マルコスさんがオオカミと行動を共にするようになったのかは定かではない。
19歳で発見された時のマルコスさんは、すっかり人間の言葉を忘れてしまい、行動も野生の獣そのものだたっとか。
山岳警備隊に保護されたマルコスさんは、そこから言葉や一般常識を学び、再び文明社会の中で生活することになった。
しかし、マルコスさんはオオカミと引き離されたことが、必ずしも幸せではなかったと言う…
オオカミ少年は社会に絶望
マルコスさんは社会に出てサービス業や建築業で働くことになったが、言葉も不自由で、サッカーや政治のことを全く知らないため同僚たちからはバカにされ、上司からは賃金を不当に搾取され続けた。
「これまでの人生を振り返った時、幸せな思い出はオオカミと一緒に暮らしていた期間だけだった。母親の愛も、兄弟の絆も、与えてくれたのはオオカミたちだった」
つらい日々ばかりが続く中、マルコスさんはすべてを投げ出して、再びオオカミの群れに戻ろうと決心した…
「これならオオカミと暮らしていたほうがよかったと思ったんです…でも、人間のニオイが染み付いた私にオオカミたちは近づきませんでした」
19歳でオオカミの群れから引き離されたマルコスさんも72歳に。
現在の生活は厳しく、わずかな年金では暖房器具を買うことも出来ないため、冬の寒い夜は、オオカミたちと一緒にコウモリや蛇の出る洞窟の中で眠っていた頃を思い出すと言う。
幸いにも、環境保護団体がマルコスさんの支援に名乗りを上げ、ネットで寄付金を募り、生活をサポートすることに。
また、学校を訪問して子供たちに動物や自然と共存することの大切さを教える活動もスタート。
人間社会に絶望していた、かつてのオオカミ少年は、ようやく希望を取り戻し始めている…