1970年代のアメリカ…
チャック・モーガンはアリゾナ州南部の都市ツーソンで妻、4人の娘と暮らしていた。
チャックは不動産の証書受託会社(不動産に対して客観的に評価を下したり、不動産取引を代行する業者)を経営していたので、一般的な家庭よりも暮らしぶりは裕福だった。そして、人当たりもよく、近所に住む人達は「ごく普通のビジネスマン」だと認識していた。
しかし…
会社経営者が不可解な失踪…
1977年3月22日、車で娘を学校に送ったチャックは、突然姿を消してしまう…
自宅への連絡もなく妻のルースが不安を募らせていると、3日後の深夜2時に裏庭で飼っていた番犬が吠えだした。
警戒しながら裏庭を確認するルースの目に飛び込んできたのは、変わり果てた夫の姿だった。
チャックは手首と足首にプラスチック製の結束バンドが巻かれ、裸足でボロボロの状態のまま地面に転がっていた…
自宅に運び込み、ルースは夫に失踪の理由を問いただした。
するとチャックは無言のままペンを握って「声を出すことが出来ない」「誰かが自分の喉に薬物を塗った」と書き記した…
夫からの秘密の告白
心配になったルースは、警察や病院へ連絡しようとしたが「家族の命に関わるから、やめてくれ」とチャックが強く反対し、自宅で療養することになった。
数日後に体調が回復したチャックは、妻にだけ自分の秘密を打ち明けた。
「ここ数年、連邦政府からの依頼で秘密裏に仕事を請け負っているんだ…」
それが、どんな仕事なのか詳しくは語らなかったが、ルースにとっては寝耳に水だった…
謎の女からの伝言
しばらくして、チャックは再び仕事を再開。
平穏な日常を取り戻したかのように思われたが、2ヶ月後に再び姿を消してしまう。
夫に強く止められているのでルースは警察に捜査を依頼することが出来ず、不安をつのらせながら連絡を待ち続けた。
そして失踪から9日後、自宅にいたルースへ謎の女性から電話がかかってきた。
「ルースですか?モーガンは無事よ。伝道の書12、1-8」
それだけ伝えると電話は切られた。
謎の女が何を伝えたかったのかルースには見当もつかなかったが、その後、チャックの失踪は最悪の結末を迎える。
失踪から11日後、ツーソンの街から60kmほど離れた地点で、買ったばかりの新車の側に横たわるチャックの遺体が発見された…
不審な遺体発見現場
遺体発見現場の様子から、チャックが何らかの事件に巻き込まれていたのは明らかだった。
チャックは防弾チョッキを着用していて、ベルトに隠しナイフ、リボルバーの拳銃で武装。
さらに車内からは予備の弾丸、無線機、ハンカチに包まれたチャックの歯が発見された。
着用していた下着には7名のスペイン人の名字が書かれた紙幣と「伝道の書12」と書き込まれた地図がねじ込まれていた。
妻ルースのもとにかかってきた謎の女からの伝言「伝道の書12」が、奇妙に一致したが、それが何を意味していたのかはわからない。
身に迫る危険に備えて武装していたように見えるが、遺体を検証すると、チャックは自分の持っていた拳銃で撃たれ死亡したことが明らかとなった。
自殺にしては不自然だし、凶器となった拳銃からは指紋が拭き取られていた。
このビジネスマンの変死事件は、当時の新聞でも盛んに報道され未亡人となったルースでさえ知らなかった事実が明らかになっていった…