裏社会とのつながり
当時の地元新聞には「チャックは犯罪組織からの仕事を請け負っていた」とのスキャンダルが掲載された。
1970年代のアリゾナ州では、マフィアによるドラッグの密売やマネーロンダリングが横行。
アリゾナ州では犯罪組織であっても、合法的に土地を購入することができたので、資金洗浄のための土地の売買が盛んに行われていた。
そんな時代背景もあって、証書受託会社を経営していたチャックは、マフィア組織からの依頼を受けて土地や金、プラチナを購入し、マネーロンダリングの片棒を担いでいたのだ。
さらに、事件当時は伏せられていたが、チャックはメキシコとの国境付近で行われていた違法行為に関して、政府の捜査に協力していたことも後に明らかとなった。
つまり…
周囲からは普通のビジネスマンだと思われていたチャックだが、犯罪組織と、犯罪を取り締まる組織の板挟みとなりながら、危ない橋を渡っていたのだ。
妻の知らないところで何10年も裏社会と取引を行い、深みにハマり抜けられなくなったと見るジャーナリストもいる。
その後の捜査で、2回目の失踪で家族の元から姿を消してから遺体で発見されるまでの間、チャックは1週間以上もモーテルに身を潜めていたことが明らかとなった。
モーテルで彼に会ったと言う人物の証言によれば、チャックはスーツケースに数千ドルの現金を所持していて、使い道をたずねると「契約を終了させるため」と答えたとか…
この大金が誰の手に渡ったのかは不明だが、次のような仮説が有力視されている。
「裏切りに気付いたマフィアから命を狙われていたチャックは、ヒットマンを買収して自分の命を繋ぎ止めようとした。そして、交渉のためヒットマンと待ち合わせた時、所持していた拳銃を奪われた後に後頭部を撃たれ、大金も持ち去られてしまった…」
マフィアとの取引で、表に出してはいけない情報を多く握っていたチャックなら、あり得ない話ではない。
自殺と断定
極めて不審な点が多い事件にも関わらず、警察はチャックの死を「自殺」と断定し、強引に捜査を打ち切った。
チャックの死を捜査していけば、マフィアだけでなく、政府や政治家にとっても都合の悪い事実が明るみになるため、面倒なことを避けたかったのかもしれない。
「私の父は、政治家や経営者の弱味に繋がる情報を多く握っていたんです。口をふさぎたい誰かの手で父は…」
今でも、幼い頃に父を亡くした4人の娘達は「父は腐敗した政治家やビジネスマンに殺された」と訴えている。
表向き事件は解決済みだが、そんなこと誰も信じてはいない…