2015年よりNETFLIXで配信がスタートした「ナルコス」は、実在の麻薬王を主役にしたクライムドラマシリーズ。
シーズン1~2は、コロンビアの麻薬密売組織メデジン・カルテルを創設し、コカインの売買で莫大な富を築いた実在の人物パブロ・エスコバルの栄光と没落を描いた。
ドラッグや拳銃の取り締まりが厳しい日本に住む視聴者は、ナルコスの中で描かれる激しいバイオレンスや、パブロ・エスコバルのぶっ飛んだ富豪ぶりに、度肝を抜かれたはず。
その後、シーズン3ではメデジン・カルテルの崩壊によって勢力を伸ばしたカリ・カルテルとDEA(アメリカの麻薬取締局)の激しい攻防、シーズン4では舞台をメキシコに移して、80年代にアメリカへ大量のドラッグを密輸していたグアダラハラ・カルテルが登場した。
「ナルコス」はドラマとしての脚色はあるにしても、実話をベースにしているため、物語の中で起こっている日常的な暴力や役人の買収なども、現実に起こった事実…
ドキュメンタリー「インサイド・ザ・リアル・ナルコス」
そんな常軌を逸した世界を、リアルに覗き見る事のできるドキュメンタリー作品が「インサイド・ザ・リアル・ナルコス」だ。
かつてアメリカ軍の特殊部隊に所属し、アフガニスタンの麻薬王を追跡していたジェイソン・フォックスが、メキシコ、ペルー、コロンビアを訪れて、現役のドラッグカルテルの構成員や、麻薬生産者などにインタビューし、ナルコスの中で描かれていた闇社会の今を追っている。
エピソード1でジェイソン・フォックスはメキシコの都市クリアカンへ向かった。
この街は「史上最大の麻薬王」とも言われ、2016年に逮捕されアメリカに移送されたエル・チャポことホアキン・グスマンが創設したシナロア・カルテルの拠点。
ドラッグを世界中にバラ撒いて巨万の富を得たシナロア・カルテルのおかげで、クリアカンはメキシコで最もリッチな街へ変貌したほど。
ホアキン・グスマンが逮捕された後も、シナロア・カルテルは相変わらずドラッグの密輸で年間30億ドル以上を稼ぎ、組織の構成員も10万人以上。
ここでジェイソンはカルテルの警備を担当している人物や、12歳のときから殺し屋として人生を送ってきた男などに接触しインタビュー。
すでに「ナルコス」や「エル・チャポ」を視聴した人なら、カルテルに近付くことが、いかに危険なのかは推して知るべし。
エピソード2のペルー編では、世界に流通するコカインの生産者を取材。
エピソード3はコロンビアで今も残るパブロ・エスコバルの足跡に迫っている。
少なからず日本にも入ってくる麻薬類が、どのように生産され密輸されているのか?
基本教養を養う意味で、視聴して損はない優れたドキュメンタリー作品だ。