今回は、ある数字に取り憑かれた強迫神経症患者の話…
怖い話「強迫神経症患者の末路」
食べ物を口の中に入れたら、必ず10回噛んで飲み込む。
ドアノブは10回まわしてから部屋に入る。
着信音が10回鳴ってから電話に出る。
親に教わったわけではないけれど、僕は物心ついた時から10という数字に惹かれていた。
10より少なくても、多すぎてもいけない。
マジックナンバー10を守って生きていくことが、僕の使命だと考えている。
精神科医に言わせれば、僕は強迫神経症ってことなのだろうけど、10回生活を不便に感じることはないし、周りに迷惑をかけることもない。
むしろ、出かける時に家の鍵をかけ忘れたり、食べ物を喉につまらせることもない。
きっと、僕にとっての10は災難を跳ね除け、幸せを引き寄せているはずなんだ。
同級生からは変わり者扱いされたけど、大人になった僕は料理人として成功した。
味が良いとメディアで取り上げられ、僕のお店「No.10」には有名人も多く来店してくれた。
もちろん料理をつくる時だって、ソースは10回かき混ぜて、ゆで卵やトマトを切り分けるのもきっちり10回。
でも先日、大きなミスをしてしまった。
ブロック肉をスライサーで10枚にしていた時、自分の指を1本切り落としてしまった。
少し迷ったけど、僕は2本、3本、4本、5本、6本、7本、8本、9本、10本、全ての指を切り落とした。
もう料理を作ることは出来なくなったけど、僕は間違っていなかったはずだ。
指1本だけじゃ、もっと大変なことが起こってたに違いないよ。