きっと誰かに話したくなるほど恐ろしい「海外で話題になった怖い話シリーズ」。
今回は、ある薬を服用している男にまつわる怖い話…
怖い話 其ノ四十八「薬の副作用」
「そんなに心配することないわ。きっと薬の副作用だから、お医者さんと相談して、別の薬に変えてもらえば大丈夫よ」
妻のエミリーは、落ち込む私を元気づけようと、いつもと変わらぬ笑顔でなぐさめてくれる。
これまで、周りに自慢したくなるほど幸せな人生を送ってきたが、今年に入ってからトラブル続きで順調だった仕事も手につかなくなってしまった。
同僚の勧めでメンタルクリニックで診察を受けると、抗うつ剤や抗不安剤、睡眠薬など聞いたこと無い名前の薬を大量に処方されたのだが、どうも相性が良くなかったらしい。
「ニールさん、診察室にお入りください」
診察室と言うよりも、リビングルームのような一室に通され、初老の医師と向かい合い、エミリーとソファーに腰掛けた。
「ニールさん、幻覚が見えるそうですが、症状はいつごろからでしょうか?」
初めに幻覚が見えたのはいつだったか…考えていると、エミリーが私に向けて指を二本立てた。
「そうだ、2週間ほど前だと思います。以前に、こちらで処方していただいた薬を飲み始めて数日後でした」
医師はじっと私のことを観察するようにジロリと見て、何やらカルテに書き込んでいる。
「そんなに緊張する必要ないのよ。リラックスして」
「ありがとう、でもエミリー、最初に見えたのは何だったかな?」
「確か…庭に子犬が見えるって」
「そうなんです先生、僕には自宅の庭に子犬が楽しそうに走り回っているのが見えたんです。でも、そこにエミリーがやって来て『あなた何を見てるの?』って聞くんです。そこの子犬だよって答えると『庭に子犬なんていないわよ』って言われたんですよ」
医師が眉間にシワを寄せて、何かを考え込んでいる…
「薬は飲み続けていたのですか?」
「ええ、気分が楽になるので」
「わかりました…少々お待ちください」
そう言うと、医師は診察室から出ていってしまった。
「大丈夫なのかな…?」
「私が付いてるから安心して。いつだって一緒よ」
しばらくして、入口の方から医師の声が僅かに聞こえてきた。
「州立病院に連絡したから、すぐに救急車を手配してください。ニールさんには亡くなった奥さんが見えてるようなんです」