今回は、突然一家の前から姿を消した女性と、カルト宗教団体の集団自殺に関する恐ろしい話…
失踪した妹とカルト宗教団体の集団自殺
私が17歳の時、2歳年下の妹ミシェルが失踪した。
ただの家出なのか、事件に巻き込まれてしまったのか、手がかりが何もなく、警察に相談しても熱心に捜査しているとは思えなかった。
私としては、ミシェルは自らの意志で、自分を取り巻く環境から逃げ出したんじゃないかと思っていた。
人と接するのが苦手だったミシェルは学校で孤立していたし、自宅でもパパやママとの間に大きな溝があった。
明らかに辛い思いをしていた妹を助けてあげられなかった事は、とても悔しく、姉としての自分を恥じた。
ミシェルが謎の失踪を遂げたことで、それほど幸せでなかった私の家族は、みるみる崩壊していった。
パパはお酒に、ママは向精神薬に逃げて現実から目を背けた。
高校を卒業して働き始めた私は、少ない給料から探偵を雇いミシェルの行方を捜索してもらったけれど、手がかりは全くつかめなかった。
やがてミシェルの失踪から10年が過ぎた…
父はアルコールで肝臓をやられて他界し、母は閉鎖病連へ放り込まれて随分経つ。
そんなある日、警察からミシェルが発見されたことを知らされた…
妹のミシェルは、当時ニュースで盛んに報じられていたカルト教団の集団自殺事件で唯一の生存者だった。
急いで病院へ向かい、10年ぶりに再会したミシェルを見て涙がこぼれた。
ひどく痩せこけていて、体のいたる所に痣や傷のあるミシェルは、とても25歳には見えない酷い有様だった。
警察の話によれば、ミシェルは家出するとすぐに、カルト宗教団体の信者として集団生活するようになり、彼女を除く50人ほどの信者たちは、数日前に紙コップで毒入りのワインを飲んで死亡した。
唯一、ミシェルはワインを飲み込まずに吐き出し、現場から逃げ出したところを保護されたそうだった。
しばらくして、病院を退院したミシェルと一緒に暮らすことになった。
気になったのは、何かを食べる、シャワーを浴びる、トイレに行く…事あるごとにミシェルは私に許可を求めることだった。
10年以上もカルト集団の中で生活していれば無理もないのかもしれないと思い、再びミシェルが普通の社会に馴染めるよう、私は気長に見守るつもりでいた。
突然の再会から3ヶ月が過ぎた頃。
寝ていると、隣の部屋から聞こえてくるミシェルの泣き声で目がさめた。
「何か話したいことがあるなら、何でも言って。私は、ミシェルが自殺を選ばないで生きていたことが嬉しいの」
すすり泣くミシェルは、低く冷たい声でこう言った。
「自殺が怖かったわけじゃないの…私があいつらの飲み物に毒を入れたの。そうでもしないと…私の地獄は終わらなかったから…」