自分が一方的に抱いた感情で暴走したストーカーには、相手の迷惑なんて関係ない。
それどころか、ストーカーの歪んだ愛情は全く無関係の人達まで巻き込んで、大事件を引き起こしてしまうことも…
新入社員の美女に付きまとうストーカー
1984年4月…
22歳のローラ・ブラックはカリフォルニア州の都市サニーベールのハイテク企業ESLに入社した。
同じESLのオフィスでエンジニアとして働いていた40歳のリチャード・ファーレイは、若く美しいローラに一目惚れ。
リチャードは自分の想いを伝えるために、何度もローラへアタックしたけれど、そもそも自分の倍近く歳の離れた男性に興味のなかったローラには全く響かない。
それどころか、一日に何度もデスクの内線に電話をかけてきたり、幾度となく断っても、手書きのラブレターや手作りパン、プレゼントを押し付けてくるなど、リチャードの常識のない行動はローラをうんざりさせた。
「君が受け入れてくれるまで、それか僕が死ぬまで君にデートを申し込み続けるつもりさ」
リチャードのローラに対する愛は、情熱的を通り越して猟奇的であった。やがて彼は職場だけでなく、彼女のプライベートにもつきまとうようになり、ストーキングやセクハラを繰り返す。
このため、ローラは何度も引っ越して住所を変えたけれど、その度にリチャードは引越し先を突き止め、彼女を怯えさせた…
度重なる嫌がらせでストーカー社員解雇
まだ今ほどストーカーが世間に認識されていなかった時代なので、警察も積極的に被害者保護に動くことはなく、ローラは忍び寄るリチャードの恐怖に耐え続けた。
そんな悪質なストーキングが4年ほど続き、リチャードが送りつけたラブレターは200通にもなり、彼女の我慢は限界に達した。
ローラは会社の人事課にリチャードからの被害を報告。会社はリチャードに対して、彼女に付きまとうのを止め、カウンセリングを受けるように命じた。
しかし、これでリチャードのストーキングは止まること無く、さらに嫌がらせは加熱。そのため、会社からの意向に背いたリチャードは、1986年に解雇され職場を去った。
ただ、会社を追い出されても、リチャードはローラに執着し、彼女を付け回した。そこで、ローラは裁判所にストーキング被害を訴え、リチャードの接見禁止命令を求めた。
そして、当時は珍しかったストーカー犯罪が法定で検証されることになったのだが、その矢先に、最悪の事件が起きてしまう…
ストーカーがオフィスで件銃乱射事件
リチャードに対する接見禁止を求めた裁判が開かれる前日のことだった…
リチャードはショットガンやライフルなど複数の銃器と数千発の弾丸と防弾チョッキで武装して、ローラが働く会社に現れた。
リチャードは駐車場から銃を乱射。やがて、社屋に侵入して、無関係な従業員に向けて次々と発砲。
そして、迷うこと無くローラが働くオフィスへ向かい、ドア越しに彼女へ向けて発砲。銃弾はローラに命中し、肩と肺を撃ち抜いた。
その後、ロバートは5時間立て籠もった後に警察が逮捕。合計で7名が死亡、4名が負傷する大惨事となったが、ローラは一命を取り留めた。
後の裁判で、罪のない7名の命を奪った悪質ストーカーのロバートは死刑が確定。
事件から40年近く経った現在も、刑務所の中で死刑の執行を待っているロバートは反省すること無く塀の中からローラにラブレターを書いている…