1984年に公開された映画「エルム街の悪夢」は夢の中で人々に襲いかかる殺人鬼フレディ・クルーガーの恐怖を描いた名作ホラー。
その後、「エルム街の悪夢」は次々と続編が製作されるほどの人気シリーズとなるのだが、夢の中の殺人鬼フレディ・クルーガー誕生の裏には、元ネタが存在した…
「エルム街の悪夢」元ネタは偶然読んだ新聞記事
「エルム街の悪夢」が誕生するきっかけとなったのは、監督・脚本を手掛けたホラー映画界の巨匠ウェス・クレイブンが、たまたま読んだロサンゼルス・タイムズの新聞記事だった。
それは、1970年代のカンボジアで問題となった、ポル・ポト政権下での大量虐殺を逃れ、アメリカへ移住した家族に関する取材記事。
1975〜1979年まで続いたポル・ポト政権下のカンボジアでは、人口の約20%にあたる200万人が飢餓、過労、拷問で死亡。
一家は、この世の地獄から、命からがら逃げ延びることは出来たのだが、アメリカ移住後に幼い息子が夜な夜な悪夢にうなされるようになった。
故郷での悲惨の体験によって、少年は「眠ってしまうと夢の中で殺されてしまう」と両親に訴え、何日も睡魔と戦いながら眠ることを拒否。
そして、極度の不眠と恐怖で憔悴した少年は、ついに眠り始めたのだが、真夜中に突然大きな叫び声を上げた。
両親が駆けつけると、既に少年は亡くなっていたと言う。
少年は、悪夢を見ながら短い生涯を終えたのだ…
この新聞記事にインスパイアされたウェス・クレイブン監督は「エルム街の悪夢」の制作に乗り出した。
アジア人の特有の睡眠障害
70〜80年代にかけて、少年と同じようにカンボジアやベトナムで悲惨な体験をした人たちが、睡眠中に死亡するケースが多数報告され、当時の医療関係者からは「アジアン・デス・シンドローム」と呼ばれた。
この偶然読んだ新聞記事からインスパイアされて、ウェス・クレイブン監督は「夢の中で襲ってくる殺人鬼フレディ・クルーガー」を誕生させたのだ。