多くの国民が貧困に苦しんでいるアフリカの先進国では、ヨーロッパのサッカーリーグで活躍して、スター選手になることを夢見る少年は少なくない。
コートジボワール出身でプレミアリーグの得点王にも輝いたディディエ・ドログバ選手や、セネガル出身でアフリカ人史上最高額となる、移籍金約46億円でリヴァプールFCに引き抜かれたサディオ・マネ選手は、アフリカの子供たちにとって憧れのヒーロー。
そんなサッカー少年の純粋さにつけ込んだ悪徳サッカーエージェントの詐欺が問題となっている。
サッカーと貧困ビジネスの闇
「君はプレミアリーグで活躍できる実力を持っている」
ナイジェリア人のアンドリュー・ジェラルドは、ラゴスのサッカークラブに所属していた18歳の時に、自称サッカーエージェントの男と知り合った。
イギリスのプレミアリーグで活躍できると信じて、アンドリューの両親は渡航費用などの名目でエージェントの男に大金を支払った。
アンドリューはナイジェリアからセネガルへ移動し、そこで「ビザが発行されるまで1週間かかる」と告げられた。
しかしビザが発行されることはなく、14年間セネガルのダカールで強制的に働かされ、最終的に彼は逃亡して助けを求めた。
すでにアンドリューは33歳。悪徳エージェントに騙され、人生を棒に振ってしまった…
「僕はエージェントの男を信じていた。プロになれると約束したんです。でも、全てを失いました。サッカーで活躍する夢を捨てられず、逃げ出すことが出来なかった」
アンドリューのようなケースは氷山の一角で、年間15,000人ものサッカー少年が、悪質な詐欺に騙されていると言う…
サッカーと人身売買
「サッカーでの栄光を求めて、アフリカからヨーロッパに人身売買される未成年は、年間15,000人以上と推定されています。プレミアリーグは、悪質なエージェントに騙されないよう注意勧告した結果、被害は減少しています。しかし、それでも詐欺被害は無くなりません」
イギリスのスポーツ安全保障センターのフレッド・ロード氏が指摘するように、弱者から金を搾り取る悪質な詐欺は後を絶たない。
アフリカの少年達は偽造パスポートを渡され、プレミアリーグと全く関係のないネパールなどの国に送られ、お金も身分証もないまま、違法薬物の運び屋や過酷な肉体労働を強いられる。
元インターポールのクリス・イートン氏はFIFAの対応を批判している。
「アフリカンフットボール連盟やFIFAは、この種の詐欺行為を野放しにして、道義的責任を怠っている。彼らは夢について語っているが、夢が悪夢に変わるケースは少なくない」