オリンピック黒歴史「双子アスリート替え玉事件」世界を騙した陸上姉妹

1984年にアメリカで開催されたロサンゼルスオリンピックで、まるで映画のようなスキャンダルが発覚した。

競技中に負傷してしまった女性アスリートが、試合に出場するため悪魔に魂を売ってしまった…

オリンピックの双子アスリート替え玉事件

オリンピック黒歴史「双子アスリート替え玉事件」

26歳のマデリン・デ・ジェススは、プエルトリコの女子走り幅跳びとリレーの代表選手として、ロサンゼルスオリンピックに参加していた。

しかしマデリンは走り幅跳びの予選で21位となり、すぐに敗退してしまう。

さらに彼女にとって不運だったのは、走り幅跳びで跳躍した際に足を負傷してしまったこと。

マデリン本人には、足の負傷が1日休めば治るような軽いものでないことが分かっていた。しかし、6日後には4×400mリレーの予選に出場することが決定している。

どうしても怪我で出場を逃したくない…

そこでマデリンは、アスリートにあるまじき不正プランを思いつく。

「替え玉を使おう…」

一卵性双生児の双子アスリート

実は、マデリンは一卵性双生児で、そっくりな外見をした双子の妹マーガレットがいた。

オリンピックの双子アスリート替え玉事件

マーガレットも同じく陸上選手で、オリンピック代表の座は逃していたものの、優れた短距離選手。そして、ちょうど観客としてロサンゼルに来ている。

「マーガレットに予選のリレーを代わりに走ってもらって、その間に自分は治療に専念。決勝レースで再び入れ替わろう…」

当然、このような替え玉がオリンピックで許されるわけはない。しかし、これがチームプエルトリコのためだと自分に言い聞かせ、マデリンは替え玉計画を実行に移した。

マデリンは計画を妹に打ち明け、選手村やトレーニング施設、スタジアムに入るためのパスを渡し、本番の数日前から入れ替わった。

8月11日、この日行われた4×400mリレーのプエルトリコ女子チームの第2走者で、マデリンに成りすましたマーガレットが本当に走ってしまった。

オリンピック関係者はもちろん、コーチもチームメイトも、誰も姉妹が入れ替わっているなんて気付いていない。

そして、プエルトリコチームは8位に入り、決勝に進出するには十分な記録を出した。

双子のアスリート姉妹は、まんまと世界を騙したのだ。

しかし、この姉妹の替え玉に唯一気づいた人物がいた…

替え玉に気づいた新聞記者

「マデリンは妹のマーガレットと入れ替わっているんじゃないか?」

この事に唯一気づいたのは、ロサンゼルスオリンピックを取材で訪れていた、姉妹の母国プエルトリコの新聞La Nacionの記者。

普段からプエルトリコのアスリートを取材していた記者は、頬のホクロで姉妹が入れ替わっていることに気づいたと言う。

この替え玉疑惑について取材を受けたコーチは、4×400mリレー決勝への出場を辞退。

新聞報道で騒ぎは大きくなり、約2ヶ月後、プエルトリコのオリンピック委員会は「マデリンとマーガレットがオリンピック関連のイベントに関わることを生涯禁止する」という厳しい罰則を下した。

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