「母からの電話」買い物を頼まれた娘は何かを忘れている

気が滅入るほど恐ろしい「海外で話題になった怖い話シリーズ」

今回は、年老いた母親と娘に関する怖い話…

怖い話 其ノ五十一「母からの電話」

買い物袋

「ちょうど外出している時、携帯電話に母から連絡があったんです。

『スーパーに寄って買い物をして来て欲しいの。パンと牛乳を1.5リットル、そして鶏の胸肉をお願い』

面倒くさいとは思いましたがスーパーに立ち寄ると、店員が不思議そうな顔で言うんです。

『あまり牛乳を飲みすぎるのも良くないらしいですよ』

とにかく買い物を済ませて家について玄関をノックしたんですが、返事がありません。母はどこかへ出かけたのかとも思ったのですが、鍵は開いていました。

家の中に入って台所に向かうと、キッチンカウンターに私が抱えていたのと同じスーパーの買い物袋が6個置かれていました。

どの袋の中身もパン、牛乳1.5リットル、鶏の胸肉。すでに腐っているものもあったので、何か胸騒ぎがしたのを覚えています。

母を呼んだのですが応えはありません。

そして…リビングへ向かおうとした時、気分が悪くなってしまって…そこからは何も覚えていません…」

近隣住民から「異臭がする」と通報を受けて、年老いた母と娘が暮らす民家に警察が到着するとした。娘は廊下で意識を失い倒れていて、リビングでは切り落とされた自分の頭部を膝の上に抱えた母親がソファーに座っていた。

死後1週間ほどが経過していて、腐敗の進んだ遺体は酷い悪臭を撒き散らしていた。

警察の要請を受けて、現場の民家にやって来た心理学の大学教授は、このような見解を述べた。

「統合失調症の患者の中には、何度も同じ行動を繰り返す人も珍しくありません。恐らく、彼女は自分の母親を殺害した日と同じ行動を繰り返していたのでしょう。毎日同じスーパーに寄って、同じものを買って…無意識に母親を殺してしまった事実から目を背けていたのかもしれません」

取調室の女は、電話を持つような仕草でブツブツと呟いている。

「もしもし…お母さん?パンと牛乳とシリアルと鶏の胸肉ね…わかったわ…」