一度、薬物中毒になってしまうと完全に立ち直るのは難しい。
患者は長期間に渡って薬物の誘惑に耐え続けなければならないからだ。
ところが、現在ブラジルでは薬物中毒治療の画期的な薬が開発され、完成に近づいているそうだ。それが…
薬物中毒患者のためのワクチンだ。
薬物中毒大国ブラジル
接種すると強い多幸感をもたらすコカインは、精神的依存が非常に強力。コカイン中毒になると被害妄想が際限なく膨らんでしまったり、体中から昆虫が這い出てくるような幻覚で錯乱状態に陥ることも…
そんなコカインの消費量で世界1位がアメリカ、そして第2位がブラジル。世界中に出回るコカインの5分の1がブラジルで消費されているそうだ。
ブラジル国内では300万人がコカインを常用していて、成人の25人に1人が日常的にコカインを接種。その内の4分の1が依存症となり、そこから回復できるのは中毒患者の4人に1人だけとのこと。
そんなコカイン中毒を治療するためのワクチン開発を行っているのが、ブラジルの名門ミナスジェライス連邦大学。
コカイン中毒対策のワクチン「カリスコカ」
ミナスジェライス連邦大学で研究開発されている「カリスコカ」というワクチンは、コカインの成分が脳に到達するのをブロックする作用があり、コカインを接種してもハイにならなくなるそうだ。
つまりコカイン中毒の患者にカリスコカワクチンを打っておけば、コカインを吸っても多幸感が得られないため、依存症に陥るのを防ぐことが出来るそうなのだ。
カリスコカワクチンは精神科医のフレデリコ・ガルシア博士と、科学者のチームが共同で研究。すでに欧州のヘルス・イノベーション・アワードで最高の賞を受賞している画期的な研究で、コカイン中毒の多い欧米諸国からも注目が集まっている。
元コカイン中毒者で現在は薬物中毒のリハビリ施設でカウンセラーとして勤務するアドリアーノ・マルティンスさんは、カリスコカワクチンに対して次のようにコメント。
「助けになるなら大歓迎です。麻薬は体も心も魂も支配してしまいます。ドラッグを断つには超人的な力が必要なんです」
こう話すアドリアーノさんも、薬物中毒から抜け出すのに24年かかったそうだ。
コカイン中毒ワクチンが完成間近!?
過去にも、コカイン中毒のワクチン開発が行われていたことがある。2000年代初頭にテキサス州のベイラー医科大学で開発されたワクチンが臨床試験まで行われたけれど、思うような結果が得られるず、世に出ることはなかったとか。
ブラジル発のコカイン中毒ワクチンカリスコカは、すでに動物実験で一定の効果が確認されていて、近いうちに人間に対して臨床試験を行っていくとのこと。