MI6の天才数学者と閉所フェチ
MI6の職員がバッグの中から遺体で発見されたことから、この事件は「バッグの中のスパイ事件」としてイギリス国内で大きく報道された。
その後の捜査で、ガレスが死亡したのは遺体発見の1週間前、8月16日と推定。遺体に怪我や誰かと争った跡は発見されず、アルコールや薬物も検出されなかった。
「他国のスパイに殺されたんじゃないか?」
「何者かがガレスを殺害して、遺体をバッグに入れて南京錠を締めたんだ」
MI6職員という仕事柄、暗殺説も報じられたけれど、バスルーム周辺からはガレス本人の指紋、DNAしか採取されず、アパートに争った跡や荒らされた痕跡は発見されていない。
MI6職員の自宅アパートだけあってセキュリティは万全で、怪しい人物が出入りした形跡もない。
最終的に、ロンドン警察はガレス・ウィリアムズの死を「事故死」と結論付けた。
実は、ガレスの使用していたパソコンの履歴を調べると、狭いスペースに閉じ込められることに快感を覚える、特殊な願望を持っていたことが判明。
つまり閉所恐怖症の真逆で、天才数学者は閉所フェチだったのだ。
警察は次のように推理した。
「ガレスは自らの意思でバッグの中に入り、中から南京錠を締めた。しかし、中から出ることができなくなって、バッグの中で死に絶えた…」
確かに、これなら辻褄はあっている。
しかし、この説を立証しようとしたところ大きな疑問が残った…