これは、今から200年以上も前に本当に起こった奇妙な事件と裁判の話…
殺人の罪で裁判にかけられた被告人は「自分がショットガンで撃ったのは幽霊だ」と無罪を主張した…
相次ぐ幽霊目撃情報と殺人事件
1804年のイギリスで、奇妙な目撃情報が相次いだ。
ロンドン西部のハマースミス地区周辺で、多くの人が全身真っ白の幽霊を目撃し、中には「体を掴まれた」「殴られた」と物理的な被害も報告された。
「自殺して天国に行けなかった人の幽霊らしい…」
そんな噂が囁かれる最中、地元住民のフランシス・スミスは、一連の幽霊騒動を終わらせようと立ち上がった。
ショットガンで幽霊を撃ち殺そうと夜回り活動を始めたのだ。
幽霊を撃ち殺すと言うのも奇妙な話だが、ある日、すっかり日の暮れた頃に見回りをしていたフランシスは、全身が真っ白の幽霊に遭遇した。
この瞬間を待ちわびていたフランシスは、離れた場所から幽霊に向けてショットガンを発射。
複数の弾丸は見事に命中し、その場に幽霊は倒れた。
しかし、幽霊に駆け寄ったフランシスは愕然とした…
そこに倒れていたのは、上下真っ白の服を着た、近所のレンガ職人トーマス・ミルウッドだったのだ。
その後、幽霊と勘違いされたトーマスは死亡。
幽霊と勘違いしたとは言え、無実の男を殺めたフランシス・スミスは殺人罪で逮捕され法のもとで裁かれることとなった…
幽霊殺人裁判で死刑宣告
幽霊を撃ったつもりが何の罪もない一般市民を殺してしまったフランシスは、裁判で「殺人は故意によるものだった」と判断され、死刑を宣告された。
しかし、上告したフランシスは「被害者のトーマスを本当に幽霊だと信じていた」と認められ、殺人罪から過失致死に減刑されると、わずか懲役1年で刑務所を出た。
しかし疑問は残る…
では一体、1804年のロンドンで多くの人が目撃した幽霊は何だったのか?
後に、この幽霊の正体は目撃情報の相次いだハマースミスで靴職人をしていたジョン・グラハムだったことが明らかになっている。
ジョンは、靴屋で働いていた見習いを怖がらせようと、いたずら心で真っ白なシーツを被り、幽霊に扮して夜な夜な街を徘徊していたと言う。
ちょっとしたいたずら心が、一人の男の命を奪ってしまったのだった…