世界中で多くの人が血を流した第二次世界大戦中…
アメリカ陸軍には「ゴースト・アーミー(幽霊部隊)」と呼ばれる特殊部隊が存在したことを、ご存知でしょうか?
第二次世界大戦で実在した「幽霊部隊」
部隊名だけで「霊能力者の隊長が戦死した兵士たちの幽霊を降霊させて敵国の軍隊を恐怖のどん底に…」なんて想像した人はB級ホラー映画の見過ぎです。
いくらなんでも幽霊兵士に国の未来を託すなんて、バカバカしすぎます。
当然ながら、ゴースト・アーミー(正式には第23本部付特殊部隊)に所属していたのは生身の人間。
ただし、部隊に所属していたのは腕っぷし自慢の軍人ではなく、芸術家や科学者、広告会社の社員、建築家、役者など、戦場では戦力にならなそうな文化系の人たち。
そう、このゴースト・アーミーに求められていたのは武力戦ではなく、戦場で敵国を騙す知能戦だったのです!!!
敵軍を騙すハッタリ集団
第二次世界大戦でゴースト・アーミーが、どんな戦い方をしていたのか?
コチラの写真を見てもらうのが、手っ取り早いかと思います。
兵士がたった4人で戦車を持ち上げてるんですが、これは兵士が人並み外れた怪力を持っているわけではありません。
これはゴースト・アーミーが考案した「空気を入れて膨らませるバルーンタイプ戦車」なのです。
もちろん、戦車本来の戦力はありませんが、バルーン戦車の狙いは「遠くから見た敵国の偵察兵士に本物だと見間違わせる」こと。
戦場でバルーン戦車を何台も膨らませば、敵国には「アメリカの戦車の大群が迫ってきた!!!」とビビらせることが出来るのです。
戦車以外にも、実物と見紛うほど忠実にデザインされた大砲、ジープ、トラック、飛行機などのバルーンを戦場に持ち込み、特殊なコンプレッサーで膨らませ、敵国を威嚇。
更に、巨大なスピーカーで予め録音しておいた「大勢の兵士が歩いている音」「飛行機が飛び立つ音」などを大音量で流す、煙や光などの特殊効果を使って敵兵士を錯乱させる、敵軍の無線に偽の情報を流すなど、知恵を絞った小賢しい戦術こそ、ハッタリ集団ゴースト・アーミーの戦い方だったのです。
そして、このゴースト・アーミーに所属していた兵士の中には、後に芸術の世界で成功を収めたアーティストも少なくないのです!!!
多くの兵士の命を救った幽霊部隊
「第二次世界大戦のゴースト・アーミー」という本の著者リック・ベイアーは、次のように語っています。
「ゴースト・アーミーに課せられたミッションは、ドイツ軍を騙すため大軍のフリをすることでした。そのため部隊は、あらゆるトリックを戦場に持ち込んだのです。敵軍による空からの偵察を騙すため、バルーンの戦車やトラック、大砲を活用したり、戦車やトラックが移動している音を大音量で流すなどのトリックを考案しました」
このゴーストアーミーの奇想天外な戦術のおかげで、戦場のアメリカ人兵士数万人の命が救われたと言われています。
「アメリカ軍はゴースト・アーミーの力で第二次世界大戦に勝利したわけではなく、彼らがいなくても結果は同じだったでしょう。しかし、敵軍を騙すことで、多くのアメリカ人兵士の命が救われたのも事実なのです」
第二次世界大戦が終結した後、ゴースト・アーミーの存在は機密扱いとなり、今でも明かされていない情報が少なくありません。
幽霊部隊から有名アーティストへ
ゴースト・アーミーに所属していた1100名の兵士の中には、終戦後にアートの世界で成功した人物も少なくありません。
写真家のアート・ケイン、画家のエルズワース・ケリー、ファッションデザイナーのビル・ブラス、歌手のアーサー・B・シンガーなどの活躍が知られています。