1975年、イギリスの都市プレストンで、26歳の女性ジョアン・ハリソンが何者かに殺害された。
この事件の容疑者として疑いの目が向けられたのは、当時、イギリスを震撼させていた連続殺人鬼ヨークシャー・リッパーだ。
1975年から5年間の間に13人の女性を殺害したシリアルキラーで、ジョアン・ハリソンも被害者の一人だと推測されたのだが…
連続殺人鬼と模倣犯
1981年、イギリスを恐怖に陥れた連続殺人鬼ヨークシャー・リッパーことピーター・サトクリフが逮捕された。
ピーター・サトクリフは、これまでに殺害した13名の女性について自供したが、その中にジョアン・ハリソンの名は無かった。
彼女を殺害したのは、ヨークシャー・リッパーの騒ぎに便乗した模倣犯だったのか?
これで容疑者の検討が全くつかなくなってしまい、ジョアン・ハリソン殺人事件の捜査は暗礁に乗り上げ、未解決事件として時間だけが過ぎていった…
ところが事件発生から30年以上の時が過ぎた2008年、思わぬ形で容疑者が浮かび上がった。
未解決殺人事件のDNA
2008年…
飲酒運転で逮捕したクリストファー・スミスという男性の唾液からDNAを採取して、データベースに登録しようとしたところ、思いもよらぬ事実が発覚した。
なんと33年前に起きたジョアン・ハリソン殺人事件で現場に残されていた犯人のDNAと一致したのだ。
衝撃の事実が判明した時、すでにクリストファー・スミスは保釈されていたので、警察が自宅へ急行。
しかし、クリストファー・スミスは飲酒運転で逮捕された6日後に死亡していた。
とは言っても、自殺で命を断ったわけではない。
飲酒運転で逮捕された時、すでにクリストファー・スミスは末期の肺がんに侵されていたのだ。
更に、亡くなる直前にクリストファー・スミスは衝撃的な遺言状を書き残していたことが明らかとなる…
殺人犯の遺言
すでに亡くなっているとはいえ、警察が殺人事件の容疑者クリストファー・スミスの自宅を捜索すると、引き出しの中から小さなメモ帳が見つかった。
「罪を告白せずに死ぬことは出来ません。私は20年以上罪悪感を抱えて生きてきました。私が起こした事件によって傷ついた全ての人達に申し訳ないと思っています。謝罪の意思を信じてください」
DNAを採取されたことで自分の逮捕が近いと悟ったクリストファー・スミスは、小さなメモ帳にジョアン・ハリソンの殺害を認め謝罪する遺書を書き残した、
そして、罪を裁かれることなく60歳でこの世を去っていった…