ベトナムでは毎年30万件もの妊娠中絶手術が行われているそうです。
この中絶件数は世界で第5位。※ちなみに日本では年間の中絶手術件数が18〜20万件ほど。
なぜベトナムでは、これほどまでに中絶件数が多いのか?
妊娠中絶と偽装結婚
ベトナムで妊娠中絶が多い、最も大きな理由は「伝統的な社会規範が根強く残っている」こと。
簡単に言うと「結婚してないのに子供を産むなんて、とんでもない」と考える人が多く、未婚の母は世間から白い目で見られるそうです。
未婚のままシングルマザーとして子供を育てることは、日本じゃそれほど珍しくもないんですが、ベトナムでは理解を得られるのが難しい。
そこで、未婚のまま妊娠した女性の多くが、中絶手術を受けているわけです。
ただ、中にはお腹に授かった新たな生命を、自分の手で育てたいと願う女性もいます。
そのような女性たちからの依頼を受けて、世間の目を欺く「偽装結婚ビジネス」がベトナムでは盛んに行われています。
クライアントの女性は、偽装結婚業者から派遣された「偽の花婿」と「偽の結婚式」を開催。
そこには「偽の花婿の偽の両親」「偽の友達」も参列し、花嫁周辺の親族、友達へ本当に結婚したのだと信じ込ませるのです。
実際に偽装結婚した人たちは、その体験談を語りたがらないため表には出にくいそうですが、偽装結婚業者は古くから存在し、近年ますますポピュラーになっているそうです。
では、ベトナムでの偽装結婚はどのようなスキームで行われているのでしょうか?
偽装結婚体験談
23歳のベトナム人女性ソンさんは、妊娠5ヶ月の時に中絶手術を受けようと、病院の外で付き添いの母親と順番を待っていたそうです。
当時付き合っていた彼氏は、妊娠を告げると彼女の前から逃げ出してしまい、娘に辛い思いをさせたくない母親の説得もあり中絶を選択。
ところが、病院で順番を待っていた時、スマホを見ていたソンさんは、ある広告を目にしました。
それが、偽装結婚業者のネット広告です。
ソンさんは何かの冗談か詐欺かと疑ったそうですが、自分の子供を守りたい気持ちもあり、その場で業者へ電話。
電話の相手は首都ハノイで10年以上も偽装結婚をビジネスにしている会社。
早速、ソンさんは業者の提案で偽の結婚パーティーを開催。
この結婚式も含めた費用は、4300ドルもかかったそうですが、誰も偽装結婚であることを疑わないほど、素晴らしいパーティーとなったそうです。
偽装結婚はなくならない
ソンさんの偽装結婚を請け負った会社の責任者グエンさんは、過去10年で1000人以上の女性の偽装結婚に関わってきたベテラン。
グエンさんの会社は毎月15回もの偽装結婚を手がけていて業績好調
「クライアントの要望に応じて、私たちは違う演者を雇います。例えば、裕福な家庭は要求も高く、偽の花婿や偽の両親にも高い教養と職業が求められます」
クライアントの大半は、婚姻前に妊娠が発覚した女性たち。ただ、中には男性と結婚したくないレズビアンの女性が、カモフラージュのため偽装結婚を依頼することも。
この他にも、偽装結婚を請け負う会社は多数あり、ある会社では偽の花婿役を400人のリストから選ぶことが出来るところや、5年契約で偽装結婚生活をサポートする会社も。
「私どものサービスが繁盛する理由は、社会的な偏見の根深さを示しています。もし、偽装結婚サービスがなければ、多くの女性が子供を中絶するか、どこか遠くへ移住しなければならなかったでしょう」