イギリスのスコットランド国立図書館には、100年ほど前に撮影された、ある頭蓋骨の写真が保管されている。
それは何か大きな業績を残した偉人や作家のものではなく、スコットランドの田舎に暮らしていた60代女性のもの。
ただ、その頭蓋骨の女性には、ある記録が残されている。
なんと彼女は「魔女」であることを告白して刑務所に収監されていたと言う…
悪魔と関係を持った魔女の頭蓋骨
1704年。
スコットランドの小さな村トリーバーン出身のリリアス・アディは刑務所の中で息を引き取った。
彼女が刑務所に収監された理由は、現代では到底考えられない。
「私は悪魔と結ばれて魔女になったのよ」
当時の記録では「自分が魔女であること」「悪魔と男女の関係にあること」をリリアスが告白したため、逮捕され刑務所に収監されたとされている。
そして魔女のリリアスには、火あぶりによる死刑判決が出されたが、執行直前に彼女は自らの意志で命を断った…
その後、地元人達は、魔女のリリアスが再び蘇って人々を襲うことを防ぐため、彼女の遺体を海岸沿いにある大きな石の下に埋葬。
その後、19世紀になると魔女やゾンビの存在を信じない科学者が研究のためリリアスの遺体を掘り起こし、頭蓋骨はセント・アンドリュース大学の博物館に渡り、今から100年以上前に写真撮影された。
その後、20世紀に彼女の頭蓋骨は紛失されてしまったが、スコットランド国立図書館には今でも写真だけが残されていた。
イギリスのBBCラジオで放送中の番組「スコットランドのタイムトラベル」の企画で、この歴史の記録に残る魔女リリアスの顔を頭蓋骨の写真からCGで再現することになった。
頭蓋骨から魔女の素顔を復元
記録によれば、リリアス・アディは60代で身体が弱く、視力も衰えていた。
現存する頭蓋骨の写真や彼女のパーソナルな情報を元にして、スコットランドにあるダンディー大学の法医学博士たちのチームが、魔女の顔の復元を行った。
その結果、現代に蘇ったリリアス・アディの顔がこちら。
ご存知の通り、かつては「魔女狩り」として、多くの女性が疑いをかけられ、火あぶりによって処刑された。
そのため、魔女とされた女性たちの頭蓋骨は、ほとんど現存していないと言う。
自ら命を断ったため火葬を免れたことで、リリアスの頭蓋骨は後世に残されたことで、今回の復元作業に繋がったのだ。
CGによって復元されたリリアス・アディの顔は、映画やアニメに登場する魔女のように醜く歪んでいるわけでもなく、何処にでもいるような普通の表情をしている。
果たして、魔女であることを告白したリリアス・アディは、刑務所で火あぶりにされるほどの悪い女性だったのか?
本当のリリアスは…
3Dによる仮想彫刻の技術によって作業を行ったクリストファー・リンは、このようにコメント。
「彼女もまた、当時の恐ろしい状況の被害者だったと思います。ですから、不自然に彼女の表情を恐ろしくすることは、ありませんでした。きっと彼女は、このような自然な顔をしていたのでしょう」
18世紀当時、魔女の疑いで逮捕された容疑者には過酷な尋問が行われ、仲間の魔女の名前を言うよう強制された。
おそらく、記録上はリリアスが魔女であることを告白したと残されているが、その信憑性は…
さらに、取り調べの中でリリアスは他の人の名前を言うこと無く自らの命を断っている。
奇しくも魔女として後世に名を残すことになってしまったリリアス・アディだが、本当の彼女は他人を思いやる心を持った、人格者だったのかもしれない…