「多重人格の怖い話」少女の中に自分も知らない邪悪な誰かがいる…

海外で話題になった怖い話の短編シリーズ…

今回は、日常的に自分の記憶が飛んでしまう女の子の話。

怖い話 第56話「多重人格の恐怖」

海外の怖い話「記憶にございません」

1年ほど前から、頻繁に自分の記憶がぽっかり抜け落ちるようになりました。

学校で授業を受けている時、街で買い物をしている時、自宅で家族と映画を見ている時、気付くと何時間も経過していて、その間に自分が何をしていたのか、まったく記憶にないのです。

気を失っているわけではなく、周りにいる人達は私が記憶をなくしていることに気付いていません。

覚えてはいないのですが、空白の時間の中でも私は普段と変わらぬよう受け答えをして、何事もなく振る舞っているようなのです。

まるでゲームをオートプレイしているかのように…

家族や友達に相談するには分からない事が多すぎるので、試しに、どのタイミングで記憶が飛ぶのか原因を突き止めようと、メモ帳に自分の行動を細かく書き留めてみることにしました。

しかし、いつものように我に返ると、ビリビリに破られたメモ帳がゴミ箱に捨てられていたのです。

 

もちろん、そんな事をした記憶はございません。

次は自分の腕に油性のマジックでメモを書き込んでみたのですが、記憶が戻ると腕のメモは消え、何度もゴシゴシ洗ったようで、腕の皮が剥けて血が滲んでいました。

もしかすると私は多重人格なのか?

自分の中の誰かが、私の詮索を妨害しているのか?

今のような状況が続くのならば、そのうち自分の知らないところで取り返しのつかない出来事が起こるような気がして恐ろしくなりました…

そして昨日、私は意を決して彼氏のアダムに全てを打ち明けました。

 

1年ほど前から、私は頻繁に記憶が抜け落ちていること、自分ではない誰かが私のフリをしていること。

この荒唐無稽な話にアダムは親身に耳を傾けてくれて、精神科のある病院へ付き添ってくれることになりました。

本日、私達はバスに乗って郊外の病院へ向かったのですが…

午前中、私とアダムは横並びでバスの座席に座ったのですが、またも記憶が飛んでしまいました。

再び意識を取り戻すと、すっかり辺りは暗くなっていて、私は別のバスに一人で乗車していました。

座席の隣りに座っていたはずのアダムの姿はありません。

 

一体、記憶をなくした数時間の間に何があったのか…?

ふと自分の腕を見ると、赤いマジックで、こう殴り書きされていました。

「もう彼に会うことは出来ない。二度と同じ過ちを繰り返すな」