これは、あるメンタルを病んでしまった女子アスリートに関する怖い話…
アメリカのオレゴン州ポートランドで生まれたアノーラ・ペトロヴァは、6歳の頃からスケート教室へ通い始めた。
アノーラはフィギュアスケートの世界で徐々に頭角を現し、13歳の頃にはジュニア大会で優勝。
有名コーチの指導を受け、オリンピック出場を目指すようになった。
彼女のフィギュア選手としてのキャリアは全てが順調に見えたが、氷上での華麗で大胆な演技とは裏腹に、アノーラのメンタルは非常に弱く脆かった…
怖い話「心を病んだアスリートとWikipediaの予言」
翌日に大切な大会を控えていた日の夜、プレッシャーで眠れないアノーラがエゴサーチすると、自分のWikipediaページを発見した。
一体、何が書いてあるのか?
興味本位で内容を確認すると、翌日に出場する大会では自分が「優勝した」と、既に結果が書き込まれていたのだ。
アノーラは自分の父親かスケートクラブの誰かが書き込んだのかと思い、翌日に確認したけれど、誰もが「自分ではない」と否定した。
真相は分からず終いだったが、アノーラはWikipediaの予言通りに大会で優勝を果たす。
この一件がきっかけとなり、アノーラは何かの大会へ出場する際には自分のWikipediaをチェックするのが習慣になり、「優勝した」と予言が書き込まれていると安心して試合に望むことが出来た。
その後はアノーラの快進撃が続く。
数々の大会で優秀な成績を収め、夢のオリンピック出場にも手が届く所まで迫った。
しかし、ある些細な行為がきっかけで彼女の歯車が狂いだす…
Wikipediaの不気味な予言
ついにアノーラは自分でWikipediaを編集して「オリンピックで優勝した」と書き加えた。
これまでのWikipediaの予言通り、これで自分はオリンピックへ出場し金メダルを手にできると彼女は確信した。
しかし、この書き込みの後から彼女は調子を崩してスランプに陥ってしまう。
焦ったアノーラがWikipediaを見ると、新たにこう書き込まれていた。
「アノーラ・ペトロヴァは何でも自分の欲しいものを手に入れたがる自己中のメス豚」
Wikipediaの予言を心から信頼していたアノーラはショックを受けた。
さらにネガティブな書き込みは続く。
「アノーラ・ペトロヴァは哀れな孤児。酷い事故で両親を亡くしてしまった」
Wikipediaの予言通りに、両親が交通事故で死んでしまうかもしれない…
焦ったアノーラは、離れて暮らす両親へ電話をしたらしいが繋がらず折返しもなかったと言う。
それから数日後、彼女の両親は本当に交通事故で死んでしまった。
この一件で精神的に衰弱したアノーラは、フィギュアスケートの第一線から姿を消した。
そして…
心を病んだアスリートの末路
それから半年ほど経った頃、安アパートの一室でパソコンの前に座ったまま衰弱死しているアノーラの遺体が発見された。
最後に彼女が閲覧していたのは、アノーラ・ペトロヴァのWikipedia。
そこには、こんな文章が書き込まれていた。
「アノーラ・ペトロヴァ(2010年10月24日死亡)は、アメリカのジュニアフィギアスケート選手。彼女は欲張りなメス豚だったので最期は孤独死した」
ここまでの話は、アノーラがパソコンに書き残していた日記を繋ぎ合わせた、彼女の主観による悲劇の物語。
だが、現実は異なる。
アノーラは「Wikipediaの予言で両親が死亡するかもしれないから連絡を入れた」と書き残していた。しかし警察が確認すると、アノーラから両親の携帯へ電話をかけた形跡は残っていなかった。
そして、Wikipediaへの誹謗中傷も、全て彼女の使っていたパソコンから書き込まれたものだったのだ。
捜査にあたった警察は、周囲からの期待と試合のプレッシャーで心を病んだアノーラが、自作自演でWikipediaに書き込みを繰り返していたのだと結論付けた。
既に彼女のWikipediaは削除されているが、かつてそこには、恐ろしくやつれ生気を失ったアノーラ・ペトロヴァの自撮り写真が掲載されていた…