これは、ある人気小説家の自殺をめぐる、とても不可解な実話。
次回作の執筆に意欲を見せていた矢先に突然の自殺…しかも、現場には不審な点が多く確認されている。
これは本人の意志での自殺だったのか?それとも事件の真相は未解決のままなのか?
人気小説家の不自然な自殺
アメリカの小説家ユージーン・イッツィは、80年代後半から立て続けに作品を出版。
故郷シカゴを舞台にしたハードボイルドな犯罪小説が話題となり、人気作家として多くの読者に支持されていたのだが…
1996年12月7日…
ユージーンはシカゴのダウンタウンに借りていた14階建てビルの仕事部屋で、首を吊った状態で発見された。
最初は、スランプに悩んだ小説家が自ら死を選んだのかと思われたが、あまりにも不審な点が多かった。
不審点1「自殺の動機」
この頃のユージーンには、自殺に結びつくような動機が見当たらなかった。
むしろ、彼は次回作の執筆に意欲を燃やしていて、親しい友人や仕事の関係者に作品の構想を熱心に語っていた。
43歳で健康面でも問題はなく小説家として油の乗っていた時期で、作品が売れず金に困っていたわけでもない。
遺書も書かずに突然、首を括る方が不自然なのだ。
不審点2「所持品」
遺体で発見された時、首吊り自殺をしているにも関わらずユージーンは防弾チョッキを着用していた。
さらに彼の履いていたズボンのポケットにはメリケンサックと護身用の警棒、現場の仕事部屋からは38口径のリボルバーも発見された。
これから自殺をする人が武器や防具を身につけるだろうか?
それよりも「ユージーンは誰かから命を狙われていた」と考えたほうが自然だし、何者かがユージーンを殺害した後に自殺に偽装した可能性を指摘する声も多い。
そして、後の捜査で実際にユージーンが脅迫を受けていた事実も明らかにされている…
潜入取材の失敗か…?
親しかった知人の話では、新作執筆のリサーチでユージーンはインディアナ州で活動している人種差別的な白人至上主義グループに潜入取材を行っていた。
しかし、身分を隠した潜入取材中にトラブルが起きてしまい、電話による脅迫を受けていたことが明らかになっている。
この事実はシカゴの地元新聞でも報じられたが、ユージーンの死に関しては1人の逮捕者も出ず警察の捜査は「自殺」として打ち切られた。
そして皮肉なことに、ユージーンの書籍で最も売れたのは彼の死後に出版された「The Criminalist(犯罪学者)」ということ…