1995年11月29日、中国の浙江省湖州市にあった家族経営の旅館で、老夫婦と孫、宿泊客の計4人が鈍器や刃物で殺害された。
現場となった旅館には監視カメラはなく目撃者もいなかったので、事件の捜査は難航。
犯人につながる唯一の手がかりは、現場に残されていた煙草の吸殻だけだった。
捜査は継続されたが長い間、事件は未解決のままだった…
中国の未解決事件
しかし年月と共に中国警察の捜査技術も発展。
2017年に現場へ残されていた煙草の吸殻からDNAからを検出し、犯人を絞り込む科学捜査が実行された。
警察は犯人のDNA情報とデータベースに登録されている6万人のDNA情報を照合。
すると一人の男が容疑者として浮上した。
安徽省(あんきしょう)在住の小説家リュウ・エイヒョウだ。
過去に出版した犯罪小説が文学賞を受賞したこともある著名な小説家だが、犯人のDNAとリュウ・エイヒョウの親族のDNAが部分的に一致。
警察がリュウ容疑者にDNAの提出を求めて再検査すると、23年前の殺人事件現場に遺されていた煙草の吸殻のDNAと完全に一致したのだ。
すぐに警察はリュウ容疑者を逮捕。
リュウ・エイヒョウは容疑を否認することなく過去の罪を素直に認め、裁判でさばきを受けることになった。
そして、これまで謎だった犯行理由なども明らかになっていった…
金に困って4人殺害
権威ある小説家が逮捕されたニュースは、中国でも大きく報じられた。
そして逮捕後の供述から、犯行時の状況も明らかとなっていった。
1995年11月29日、リュウ・エイヒョウは犯行現場となった旅館に宿泊していた。
当時、リュウは金に困っていたため、身なりの良い宿泊客の持ち物を盗み出して現金に変えようと実行に移した。
しかし盗みの現場を宿泊客に見られてしまったため口封じのために殺害。
さらに騒ぎを聞いてやって来た旅館の主、その妻、孫も次々と殺害した。
ただ4人もの命を奪ったが、この時に得られたのは僅かな現金と時計や指輪だけだったと言う…
逃れられない罪悪感
逮捕後、リュウ・エイヒョウはメディアのインタビューで罪の意識を抱えながら生きてきたことを告白している。
「100回の死に値するほど残酷で悪いことをした。捕まえてもらったことに感謝している」
また、2010年に出版されたリュウ・エイヒョウの小説「罪の秘密」の中には、自分が犯した殺人事件からインスパイアされた表現も盛り込まれていると明かした。
そんな罪を告白したリュウ・エイヒョウは裁判にかけられ…
中国の有名小説家に死刑判決
2018年7月、4人の殺人罪に問われていた53歳のリュウ・エイヒョウに、裁判で死刑判決が下された。
20年以上も未解決のままだった殺人事件は、まるでクライムサスペンス映画のようなストーリーで、解決へ導かれたのだった…