スペイン出身の巨匠パブロ・ピカソ(1881-1973)は、ギネスブックに記載されるほど多作な芸術家と知られています。
生涯で絵画1万3500点、版画10万点、彫刻や陶器300点と、膨大な作品を残し、そのどれもが超高額で取引されています。
そんなピカソの手がけた作品の中でも非常に珍しい自作の指輪がオークションに出品され、予想では50万ポンド、日本円で約7000万円以上での落札が期待されているとか。
ピカソが自作したワケありの指輪
その指輪がこちら。
指輪にはピカソお馴染みのシュールで記号的な作風で女性が描かれ、その周りを花の細工が彩るエレガントでロマンチックな一品。
実はこのリングは、かつてピカソが交際していた彼女ドラ・マールに贈ったもの。
しかも、ピカソがこのリングを自作したのには、ある理由があったからなんだそうです…
彼女の機嫌を取るためピカソは…
1935年…
ドラ・マールは映画の現場で写真家として働いていた時に、ピカソと出会い恋に落ちます。
ピカソは1918年にオルガ・コクローバと結婚していましたが1927年には別居。
しかし、1955年にオルガが亡くなるまで二人は法律上、婚姻関係にありました。
つまりピカソとドラは不倫関係。
にも関わらず、二人は長い時間を一緒に過ごし、ドラはピカソの芸術活動を大きく支えるミューズとなります。
ピカソの傑作と言われる「ゲルニカ」の製作時にも彼をサポートし、記録用の写真を撮影したり「泣く女」のモデルにもなっています。
しかし、ある日のこと、ピカソは些細な事でドラを怒らせてしまい、苛立った彼女は指にはめていたリングをセーヌ川に投げ捨ててしまいました。
最愛の人を怒らせてしまったことに罪悪感を覚えたピカソは、彼女の肖像画をあしらったリングを自作して後日プレゼントとして贈ったそうです。
それが、今回オークションに出品されるリングが制作された経緯。
まあ、早い話が「怒った彼女のご機嫌をとろうとプレゼントを贈った」ってことなんですよ。
しかし、さすが天才芸術家が自作したリング。
その後、二人は関係を解消して別々の人生を歩むのですが、ドラはピカソから贈られたリングを決して手放すことなく1997年に89歳で亡くなるまで、生涯大切にしたんですって!!!
指先にピカソ
サザビーズでオークションにかけられるのは、まさにドラが生涯大切にした世界にひとつだけのピカソリング。
サザビーズのキュレーター、トーマス・ボンパートは、指輪をこのように評価しています。
「時として、小さなものに思考と感情が宿ることがあります。このリングからは、ピカソとドラの親密な関係を垣間見ることが出来ます」
ピカソは精力旺盛なプレイボーイで、生涯に何人もの女性と恋愛関係にありました。
そんな天才芸術家の恋の一端を垣間見れる指輪のお話でした。