2021年9月12日の早朝…
一人の初老の男性が、オーストラリアのシドニーにある警察署を訪れた。
男の名前はダルコ・デシック、年齢は64歳。ダルコは警察署の職員に、こう告げた…
「私は30年前に刑務所を脱獄しました。新型コロナウイルスのロックダウンで無職になり住む家も無くなってホームレスになってしまったので、刑務所に戻りたい…」
コロナが原因で30年前の脱獄囚が出頭
今から30年前、当時35歳のダルコ・デシックは、大麻の違法栽培で逮捕され、裁判の結果懲役3年半が言い渡された。
刑務所に収監されたダルコは焦った。と言うのも、彼は旧ユーゴスラビアからの移民で、懲役を終えた後はオーストラリアを追い出され、強制送還されると考えたからだ。
そこで、ダルコは刑期が終わる前に刑務所から脱獄することを決意。1992年7月31日の深夜に、ボルトカッターと糸ノコを使って脱獄した。
囚人脱獄のニュースは、当時の新聞やテレビで大きく報じられ、警察も血眼になって行方を追ったけれどダルコを捕らえることは出来なかった…
脱獄囚がホームレスに…
見事に脱獄を成功させたダルコは、日雇い仕事などで金を稼ぎつつ、警察の目につかないよう、シドニー郊外でひっそりと生活していた。
時々、テレビの犯罪捜査系番組では「オーストラリアの最重要指名手配犯」としてダルコが取り上げられることもあったけれど、10年…20年と年月が経過。
ダルコ自身も、このまま死ぬまで逃げ切れると思っていただろうけど、予想外だったのは2020年から始まった新型コロナウイルスのパンデミックだ。
徐々にダルコの仕事は減っていき、2021年6月からオーストラリアのシドニーがロックダウンされると、完全に収入が途絶えてしまった。
家賃が払えず、ホームレスになってしまったダルコは、ビーチで野宿している時に決心したそうだ。
「家が無くなってしまった…屋根のある刑務所に戻ろう…」
こうして30年前の脱獄事件は自らの意思で警察に自首。墓場に入るまで終わらないって考えると脱獄って大変…