2012年…ロシアと中国に隣接する中央アジアのカザフスタン共和国、カラチ村で奇妙な病気が蔓延し始めた。
それまで健康には問題のなかった村人たちが、突然、深い眠りに襲われるようになったのだ。
原因不明の奇病「居眠り病」にかかったのはカラチ村で暮らす子供から大人まで約160人。
一日に何度も眠りに落ちてしまったり、1度に6日間も眠り続けてしまったり、原因がわからず医者も手の施しようがなかった。
事態を重く見たカザフスタン政府が調査に乗り出すと、奇病の原因も見えてきたが…
居眠り病が蔓延したカラチ村とその後の調査結果…
カラチ村での奇妙な居眠り病が世界的にも話題となった後、2014年に地元新聞社が現地取材を行った。
「居眠り病の住民は、意識がある時は問題ないが、強烈な眠気に襲われると抗うことが出来ず、眠りから起きると直前に自分が何をしていたのか記憶がなくなっている」
「ある男性は眠りから覚めると強い興奮状態で、すぐに妻の体を求めた。この興奮状態が一ヶ月以上続いた」
「住民たちは睡眠の前後で、幻覚を見ている。ベッドの中で翼の生えた馬や蛇を見た子供や、突然飼い猫がおかしくなって壁に身を投げるのを見たという主婦の証言もある」
記憶障害、幻覚症状も伴う居眠り病の原因として「粗悪なウォッカ」「集団ヒステリー」「突発性のナルコレプシー」などの仮説も囁かれた。
2015年、カザフスタン政府は居眠り病に関する調査報告を発表。原因は「一酸化炭素中毒」だと明らかにした。
居眠り病が蔓延していた当時、カラチ村では通常の10倍以上、一酸化炭素濃度が高かったそうだ。
調査に参加したロシアの科学者によれば「近くの廃坑となったウラン鉱山の地下水から一酸化炭素が大量発生し、カラチ村に流れ込んだ。その結果、住民たちを深い眠りに誘った」とのこと。
多くの住人たちはカラチ村から移住して、しばらくすると居眠り病の症状も現れなくなったと言う。
ただ、この調査結果に異論を唱える研究者も…
一酸化炭素原因説への反論
すでに居眠り病は解決したとされているが、一酸化炭素原因説に反対する学者もいる。
カザフスタンのバイロン・グレープ教授は「汚染させた井戸水が原因だ」と主張している。
ウラン鉱山から染み出した化学物質が地下水を汚染。その地下水をカラチ村の住人たちが汲み上げて生活用水として利用していたことが原因だと指摘している。
すでに汚染された地下水は無くなり、カラチ村周辺でも居眠り病の報告は無くなったそうだ。