悪夢にうなされるほど恐ろしい「海外で話題になった怖い話シリーズ」。
今回は、夢に挫折した男の怖い話…
怖い話 其ノ四十六「演技の才能」
小さい頃から役者に憧れていたアンディは、時間とお金が許す限り映画館や劇場に通い貪欲に演技を学んだ。
大学では演劇論を専攻し劇団にも参加したが、役者の仕事だけで生活するのは難しく、演技とは関係のないアルバイトばかりの毎日に嫌気が差していった。
ある日、アンディはふと立ち寄ったレストランの階段から転げ落ちて片足を骨折した。
この時、足の痛みに悶ながら一つの考えが閃いた。
レストランのオーナーを訴えて、損害賠償を請求したのだ。
松葉杖をついて裁判所に入廷したアンディは、陪審員たちへ涙ながらに「骨折でアクション俳優への夢が絶たれたこと」「生きる希望を失ったこと」を訴えた。
実際には数ヶ月で骨折は完治するし、最初からアクション俳優への憧れなんて抱いていなかったが、これまでに培った演技力で悲劇の主人公を演じきってアンディは大金を手にした。
自分の才能の活かし方に気がついたアンディは、自動車会社、製薬会社、食品会社に難癖をつけて、次々に裁判で賠償金を勝ち取った。
そして、彼が次に目をつけたのは郊外にオープンしたショッピングモールだった…
滑りやすそうなタイル張りの階段があり、周りには目撃者も多い…
覚悟を決めたアンディは、わざと階段を転げ落ちながら悲鳴を上げ、周囲の注目を集めた。
「大丈夫ですか!?」
全身を強打した痛みで動けないアンディのもとに、一人の警備員が駆けつけ心配そうにひざまずく。
次の瞬間、警備員はアンディの口を塞ぎながら頭部を抱え強引にヒネった。
ショッピングモールに流れる陽気な音楽とアナウンスで、アンディの首の骨が折れる鈍い音には誰も気付かなかった…
「誰か救急車を呼んでください!彼の首は折れているかもしれない!」