現在、南米のベネズエラでは、あまりに犯罪が多すぎるため、警察による治安維持がほとんど機能していない。
特に、首都カラカスでは2017年だけで14,000人が死亡し、殺人発生率は世界でもトップクラス。
そんな危険と隣り合わせのベネズエラで怯えながら暮らしている一般の人たちが足繁く通う宗教施設がある。
それがサントス・マランドロス(聖なる雄牛)寺院だ。
ベネズエラのギャング神社
犯罪件数の多いカラカスの墓地など、数カ所に存在するサントス・マランドロスは、一般的な教会や神社とは大きく異なる。
なぜなら、礼拝に訪れた人々が祈りを捧げるのは、過去にベネズエラに実在した「カリスマギャングたち」なのだ。
犯罪者に救いを求める人達
グラサンにキャップ、くわえタバコで腰には拳銃を携え殺る気満々のギャング像に向かって祈る人々…
ギャングの犯罪に怯えている一般の人たちが、なぜギャングに祈るのか?
ベネズエラの人類学と宗教学に詳しいデイジー・バレット教授によれば、凶悪犯を崇拝するカルチャーは、1989年頃から現れだしたそうだ。
ベネズエラの治安の悪さが上昇するに連れて誕生したそうで、現在では一日に数百人がやって来て「盗難や銃撃からの保護」「愛する人の健康」などを祈っている。
崇拝の対象は過去にベネズエラに実在したギャングたちで、裏社会で名を轟かせた悪党ばかり。
中でも、人々に最も支持されているのが、1950〜60年代に実在したイスマエルという名のギャングだ…