怖い話No.26「モリーとマロリー」
私と双子の妹マロリーは、他人なら見分けることが不可能なほど似ている。
外見上の唯一の大きな違いは、マロリーの腕には、子供の頃に日焼けしすぎて火傷してしまった時の痕が今でも残っていること。
私たち姉妹は、とても仲が良かったんだけど、マロリーがサムと付き合い始めて一緒にいる時間は減っていった。
2週間前、マロリーの外出中にサムがうちへやってきた。
「彼女は泊りがけでジェシカの家で勉強をしてるよ」と言う前に、サムは私にキスをした。
「モリーはいないの?」
私は長袖を着ていたので、火傷の痕で見分けることも出来ないから、サムは私と妹を勘違いしていた。
でも、サムはイケメンだったし、男の子とキスをするのは初めてだったけど嫌な気はしないし…
だから私は悪いことを考えてしまったの。
「今日は私一人なの」
マロリーに成りきってみたけど、この判断は間違いだったのかもしれない。
「よかったな、最近モリーがムカつくって言ってたから気が楽だろ?」
意味がわからなかった。
ムカつく?
混乱する私に、再びサムは激しくキスをした。
口を塞がれながら、私は気がついた。
マロリーは私が欲しいものを全て持っていたこと…
翌朝、マロリーは疲れた顔で帰宅した。
「勉強は大変だったみたいだね、日曜なんだからゆっくり休みなさい」
「そうね、天気もいいしビーチで横になってくるよ」
「じゃあ、私の新しい日焼け止め貸してあげるよ」
マロリーに日焼け止めのボトルと錠剤を2つ差し出した。
「頭痛薬も飲んでおいたら?」
「本当にありがとう、じゃあ1時間くらい行ってくるね」
マロリーに日焼け止めを塗ってあげて、錠剤を飲み込むのを確認して玄関から見送った。
その日は、とてもよく晴れていた。
強い日差しのビーチで、マロリーはぐっすりと眠っていた。
私はマロリーに塗った日焼け止めを拭き取り、日光避けのパラソルを引き抜いて帰宅した。
日が沈んだころ、自宅にサムがやってきた。
「今日もモリーはいないの?」
「知らないわ」
私はサムにキスをしながら、足元に置いておいたガソリンの入ったポリタンクを蹴り倒してジッポに火をつけた。
怖い話No.27「山での事故」
これは、かつて軍隊に所属していた男が、山道を走行中に事故を起こした時の話なんだ。
男からの通報を受けて警察が現場に到着したんだけど、車は全く無傷で道路の真ん中に停車していた。
運転していた男は、道路に横たわっていた男女をひいてしまったと必死に訴えたそうなんだ。
でも、現場には一滴の血液も落ちてないし、誰がどう見たって人身事故なんて起きてないんだよ。
その上、男はライトに照らされた草の茂みから、大勢の人が自分のことを見ていたと訴えた。
結局、事件性は無いと判断されて、男は車で立ち去ったんだけど…
この話を聞いた私は、全身に鳥肌が立つほどの恐怖を覚えたんだよ。
以前に同じような話を聞いたことがあってね、山岳地帯で暮らす人の中には、この男と同じような幻覚を見る人が稀にいるんだって。
結論を言うと、このような幻を見るのは「人間を食べたことのある人」か「頭のおかしくなった人」のどちらかなんだって…