怖い話No.30「世界平和」
「もし本当に神がいるなら、どうして世界中で悪いことばかり起きるの?」
それは、よく聞かれる質問だ。
いいかい?
この世界は、絶妙なバランスで成り立っているんだ。
光と影、善と悪、騒音と静寂。
一方が欠ければ、もう一方も存在することは出来ないんだ。
「じゃあ、神様は悪魔と戦ってるの?」
もちろんだよ。
神は悪魔と戦っているよ。絶え間なくね。
私はダータリアンと言って、神に仕えている天使の一人。
世界中を移動しながら、悪魔を探し出して処分しているんだ。
君が耳を塞ぎたくなるような、悪いことをする怪物たちを粛清するのが私の仕事さ。
みんなが安心して眠れるのも、私のような天使が悪魔や怪物と戦っているからなんだ。
私の役目は…
近い将来、とても恐ろしくて卑劣な罪を犯す、生きるに値しない怪物の芽をつむことさ。
「でも、ダータリアンなんて天使の名前は聞いたことがないよ?」
当然だよ。
今、この世界でダータリアンの名前を知っているのは君だけだからね。
正確には知ってしまった…かな?
怖い話No.31「写真の少女」
学校からの帰り道。
16歳のクレイグは歩道に1枚の写真が落ちているのを見つけた。
思わず拾ってしまった理由は、写真に写る少女が、あまりにも可愛かったからだ。
“ピースしている女の子は自分と同い年くらいかな?”
帰宅してからも、名前も知らない写真の少女について妄想している内に、クレイグはどうしても彼女に会ってみたくなった。
“もしかすると、意外と近所に住んでるのかも?”
クレイグは学校の同級生や家族に、写真の少女を知らないか聞いてみたが、手掛かりは無し。
“警察官をしている叔父なら、彼女を知ってるかもしれない”
クレイグは放課後に、叔父の勤務する警察署へ自転車で向かった。
しかし、信号の無い大通りを横切って近道しようとしたところ、乗用車にはねられ死亡してしまった。
彼の胸ポケットには、血痕の付いた少女の写真。
彼女のピースサインが3本指に変わっていたことには、誰も気づかなかった。