怖い話No.12「キャンプの写真」
都会とは全く縁のない田舎で育った私の楽しみは、ハイキングやキャンプなどのアウトドアが中心だった。
ある夏のこと、19歳の私は3泊4日で一人キャンプを楽しむことにした。
とは言っても、寝泊まりするのは自宅からそれほど離れていない勝手知ったる森の中。
子供の頃から何度も訪れている、とても安全なエリア。
私はカメラを持参して、風景写真ばかりを撮影し、キャンプから戻ると早速現像した。
すると、その中に3枚だけ自分が撮影したはずのない写真が混ざっていた。
写っていたのはテントの中で寝ている私…
何も盗まれていないし、どこかを傷つけられたわけではない。
しかしキャンプの間、毎晩テントで寝ている私のそばには…誰かがいた…
怖い話No.13「階段」
1984年に起きた事件の話をしよう。
その2階建ての家には車椅子の老婆が一人で住んでいた。
夫が不可解な死を遂げてから、毎日家を訪れる介護師の助けを借りて、老婆は一人で家に住み続けた。
2階へ上がるためには、古い階段を登るしか手段がないため、介護師はやつれた老婆を背負って、家の1階と2階を行き来した。
ある日、警察へ通報が入る。
「うちで人が殺されているの…」
電話の主は車椅子の老婆だった。
当時の警察が人員不足だった事に加え、通報した老婆が言うには「すでに犯人は逃げた」とのことなので、警官が一人だけ現場に向かった。
老婆の家で警官が見たのは、家の1階で喉を切り裂かれて絶命している男性の介護師だった。
家主で目撃者の老婆は、事件発生時から家の2階にいたため、車椅子で階段を降りることが出来ず、襲われている介護士を助けられなかったと、涙を流しながら証言した。
この時、警官には気がかりなことがあった。
数年前に老婆の夫が1階のソファーで眠っている間に殺害された時も、車椅子の老婆は2階にいて早々に容疑者から外されたのだった。
同僚が捜査を担当していたが、結局、犯人の手がかりさえ見つからなかったと聞いたことがある。
とりあえず検視官が到着するまで、警官は現場の写真を撮影して証拠品を探した。
家の2階も見ていいか許可を求めると、警官には老婆がほんの一瞬、躊躇したように見えた。
「私は事件が起きた時は2階にいて…今日は他に誰も上には来ていませんよ」
階段を上がって老婆の脇を通り抜けると、狭い廊下の先に3つの部屋があった。
警官は1つずつドアをチェックし始める。
物置…
バスルーム…
そして、3つ目のドアは普通の寝室だった。
老婆が毎日寝ているであろうベッド、小さなテーブルとランプ、ワードローブ…
彼は部屋の隅々までチェックしたが、何か事件につながるような証拠品は発見できなかった。
しかし、ある事に気付いて警官は青ざめ、腰の拳銃に手をかけた。
老婆の夫が死んだ時の調査で、同僚は見落としていた…
この家の2階には電話が無い。
その時、部屋の外で物音がした。
彼は拳銃を構えながら部屋を飛び出し、廊下を進んで階段まで駆け寄った。
が、そこに老婆の姿はなく車椅子だけが残されていた。