怖い話No.20「中古のカメラ」
小包を開ける僕の手は、嬉しさで震えていた。
中に入っていたのは、オークションサイトで落札した中古のデジタル一眼レフカメラ。
新品では手が出なかったけど、ebayで驚くほど安い値段で落札できたから、手元に届くのが待ちきれなかったんだ。
早速、電源を入れてみると、本体にはメモリーカードが入ったままだった。
前の持ち主が入れっぱなしにして、忘れたのだろう。
もちろんメモリーカードは送り返すつもりだったけど、どんな写真が入っているのか気になって、悪いとは思いつつも覗いてみることにした。
最初にディスプレイへ表示されたのは、宅配便の発送伝票だった。
全く知らない男性の名前と住所が書き込まれていた。
次の写真は………お腹に包丁が突き刺さった血まみれの男性…
発送伝票…
真っ赤な浴槽の中で白目をむく女性…
発送伝票…
全身真っ黒に焦げで性別も年齢もわからない…
最後の写真は、ついさっき届いたばかりの小包に貼り付いていた、僕の自宅住所が書かれた発送伝票。
そして今、誰かがうちのインターフォンを鳴らした…
怖い話No.21「水恐怖症」
物心ついた頃から、僕は水に潜るのが怖かった。
だから僕は泳げないし、友達から誘われても、水遊びには絶対に参加しませんでした。
父が言うには、僕は小さな頃に溺れて死にかけた事があったそうですけど、よく覚えていません。
ただ、我慢して水中に潜って水面を見上げると、僕にはいつも同じ女性の姿が見えるのです。
ブロンドの髪と青い目をした女性が、私を見て微笑みかけるのでした。
例えば、お風呂のお湯の中に潜った時でも、僕の目の前には、この女性が必ず現れます。
水の中は怖いけど、何だか無性に、その女性に逢いたくてお風呂に潜ることもありました。
彼女を見ると、穏やかな気持ちになれたんです。
誰にも言っていませんでしたが、もしかしたら、あの女性が自分の母親じゃないかと小さい頃から考えていました。
母は、僕が小さい頃に他界したため顔も覚えていないし、父も話したがらないし、写真でさえも見たことがありません。
ですが、つい最近、今まで父に黙っていた水中で見る女性について、初めて打ち明けました。
ブロンドヘアーや青い目など説明すると、父は明らかに動揺しているようでした。
父は多くを語りませんでしたが、僕が小さい頃に亡くなった母もブロンドの髪に青い目をしていて、僕のことをとても愛していたと教えてくれました。
その日から、僕の中で母に対する好奇心が膨らんでいったんです。
そこで、父に内緒で母について調べてみることにしました。
出生証明書から母の名前を見つけ出し、図書館で新聞を検索すれば、何か記事が出て来るのではと考えたんです。
そして今日、僕は母について書かれた新聞記事を発見してしまいました…
昨晩、28歳のマリー・ホワイトは施設を抜け出し、フェンスを乗り越えて侵入した貯水池で溺死しました。
葬儀は25日に家族によって行われる予定。
マリーは我が子を殺害しようとした罪に問われた裁判で、精神鑑定の結果、無罪となったが、6ヶ月前に施設へ強制収容された。
妻が風呂場で幼い息子を溺死させようとしていたところ、夫のダニエル・ホワイトが救出し、息子は一命をとりとめた。